JOURNAL FILE #10


新型ウイルスの影響で、社会は大きく変わろうとしている。多くの企業・個人にとってターニングポイントになる可能性もある。そこで今回は、既存の枠組みに収まることなく複数の企業で活躍する西井敏恭氏に、これからの働き方をテーマに話を伺った。対談相手を務めるのは、ユニオンゲートグループ取締役CMOの河合健太郎。ふたりの会話を通じて未来を読み解いていく。

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PLOFILERYOTA MISHIMA

株式会社シンクロ代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社CMT

Toshiyasu Nishii

1975年福井県生まれ。2001年から世界一周の旅に出た際、WEBで展開してきた旅日記が人気に。帰国後、旅の本を出版して、ECの世界へ。各社でEコマースを10年ほど経験し、2013年末、前職のドクターシーラボを退社。南極など旅行し、2014年6月に帰国。現在はオイシックス・ラ・大地のCMT(チーフマーケティングテクノロジスト)、GROOVE XのCMO(チーフマーケティングオフィサー)として働きながら、自身が設立した株式会社シンクロで大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティングを支援したり、企業と提携してデジタル事業を協業している。

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storyRYOTA MISHIMA

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旅に出ることでマーケターに必要な能力が培われていった

旅に出ることでマーケターに必要な能力が培われていった

河合 健太郎(以後:河合)「西井さんは現在、複数の企業に勤めていらっしゃいますよね。時間配分はどうされているんですか?」

西井敏恭氏(以後:西井)「シンクロに週3、オイシックス・ラ・大地に週2、GROOVE Xに週2で勤務しています。あれ、週に5日超えてる(笑)」

河合「毎日とても忙しいと思うのですが、どのような1日を過ごしているのでしょうか?」

西井「朝は8時半に起きて、ヨーグルトとコーヒーを飲みます。それで9時半くらいから18時半までは、ワークタイム。一日中打ち合わせが中心で、過去最高は1日22本とかミーティングがあって、それが30分単位で入っているので本当にスキマ時間もないです。さらに19時ぐらいから誰かとご飯を食べながら打ち合わせをしたり、会食に行ったりするので、新型ウイルスの騒動があるまでの15年くらいは自宅で食事をとったことがありませんでした。お酒は飲まず、2次会にもほぼ行きません。だから23時ぐらいには家に帰って、デスクワークをしてから午前2時くらいに寝る。平日はそんな感じです。それが3ヶ月先まで決まっている状況です」

河合「すごいですね。西井さんの場合どこでも仕事ができるから、仕事と遊びの境界線も曖昧になっていますよね。しかもよく旅行にも行かれていますよね」

西井「会社と家の往復だとあんまり考えたりしないんですけど、旅に出るとマーケターとしての勘が鋭くなる気がしていて。旅先だと、朝は何を食べようとか、今日はどこに行こうか、どうやって行こうかといろいろ調べるんです。それが結果として思考のトレーニングになって仕事に活かされているのかなと思いますね」

河合「マーケティングって、お客さんの気持ちになって考えないといけないですよね。それが基本中の基本なんで、体験が多いだけ想像力の種類が増えるんだと思います。昔、ある先輩に『知っている人より実行した人の方が百倍偉い』みたいなことを言われたことがあるんですけど、まさにその通りだなと」

西井「旅に出ることで、意識的な消費が増えるんでしょうね。いつもと違う環境で考える必要があったり、不便なこともたくさん起こったりするので(笑)。その分、深い体験になりますね。僕は会社のみんなとよく旅行に行くのですが、旅先の方が思想の共有がしやすいと思っていて。旅費は全部会社で出すんですけど、そこでどういうふうに社会を変えたり、働き方を変えたりしたいと考えているのかを話しています」

河合「旅を通じて根本的な価値観が共有されているのは、おもしろいですね。ちなみに、これからの時代においてオフィスはいらないと思いますか?」

西井「基本的にはいらないと思います。実は僕、社長を務めているシンクロでは社員のみんなと一緒に仕事する、ということはほとんどないんですよ。定例会議みたいなものもない。ただ、人と集まる時間は大事だと思っていて。先ほども話したように、会社のメンバーと旅先の時間を共に過ごすことで、普段は顔を合わせなくても違和感なく働くことができると思います。また、慣れない場所での思考や行動がマーケティングにも役立つので、会社のみんなには、緊急事態宣言時以外はなるべく外に出るように伝えています」

河合「おもしろい考えですね」

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昨今のウィルス騒動によって、消費の在り方が大きく変わった。

昨今のウィルス騒動によって、消費の在り方が大きく変わった。

河合「新型コロナウイルスの影響によって、日本の消費の在り方は今後どうなっていくと思いますか?」

西井「旅行が気軽にできなくなったとかネガティブな面も多いですけど、キャッシュレスとかリモートワークが一気に浸透したのはポジティブですよね。この騒動があったことで5年ぐらい時間を進めることができたと思います。日本って“会うことがビジネスの基本”みたいなところがあるじゃないですか。もちろん人と会うことは大事だと思うけど、別に会わなくてもいい場合もあると思うんです」

河合「ありますね(笑)」

西井「一方で、北欧のエストニアって人口が100万人くらいなんですけど、ユニコーン企業を4社も輩出しているんです。それは国内市場に留めず、ヨーロッパ全土を市場にしているからで。当然ながらエストニア以外にも社員がいるから、基本的にリモート。そういうことを当たり前のようにやっている。それなのに、日本は国内市場に留まることが多いから会うことがベースになっていますよね。それは本当に悪き習慣」

河合「BRIEFINGも自粛期間中は店舗を閉めなくてはいけなくなってしまったので、それは大打撃でした。でも、その一方でECは大きく伸びています。だから、今がターニングポイントになるんだろうなと予測しています。賢い会社、変化に強い会社はどんどん強くなっていくはず」

西井「僕がCMOを務めているGROOVE Xという会社では、『LOVOT(らぼっと)』という家族型ロボットを販売しているんですけど、ウィルスの騒動が起きる前はマーケティングもオフラインが基本だったので、自粛しなきゃいけなくなったと知ったときはけっこう絶望的で。というのも、ロボットは1体30万円とか50万円とかするんですよ。お客さんからしたら手に取って確かめたいじゃないですか。だから、社員もECで売れるわけがないという予想をしていました。ただ、オンラインの施策をめっちゃ頑張ったんです。そうしたら、次第に売れるようになってきて」

河合「たとえばどんなことをやられたんですか?」

西井「LOVOTとの生活をイメージしやすい動画を増やしたり、SNSで喜んで頂いてる声をシェアして届けるように取り組んだりしました。それが結果的に大きな売上アップにつながりましたね」

河合「素晴らしいですね」

西井「なんで売れるのかを考えたんですけど、たとえば自動車メーカーのテスラって今回の騒動を機に販売店をすべて閉じて、ECに振り切ったんですよね。それでも売れるじゃないですか。一方で日本車は販売店がないと厳しいと思います。その違いって、実際に足を運べるかどうかなんですよね」

河合「そうですね」

西井「インターネットがない時代は車を買うまでに7〜8回はディーラーのもとに足を運んでいたらしいんです。それが今では2回にまで減っているそうで。これが0になるかもしれないと考えると、Webサイトに注力するのは悪くないと思います。店舗をつくるのに1億とか2億かける会社はいると思うんですけど、Webサイトにそれだけの予算をかけることってほぼないですよね。でも、それくらいの投資をして、人が足を運ぶ必要のないくらい情報を充実させてしまえば、もう店舗は必要なくなります」

河合「確かに」

西井「そもそも見に行く時間がもったいないじゃないですか。ネットでピッと買えたらいい。でも、買えないのは不安があるからですよね。たとえば、僕はBRIEFINGの質が高いことを知っているから、デザインとサイズが理解できれば直接手に取らなくても買います。その仕組みをうまくつくることができたら、店舗自体が必要ないかもしれませんよね」

河合「いわゆる不動産を持って、そこに来てもらう発想がどこまで必要かということですよね。ECで完結できればそれがベストだし、モバイル店舗でお客さんのところに行けばいいという発想もある。ZoomがあればWebで接客もできますし」

西井「とはいえ、インターネットだけだと関わり合いがどんどん希薄になってしまうんですよね。Amazonは便利だから使うけど、出会いにはなりにくいじゃないですか。だから、リアルな場も新たな出会いを生むためには必要なんですよね。実際、中国ではリピーターはインターネット、ファンはリアル店舗に集まるような仕組みをつくっています。だからBRIEFINGも『BRIEFING CAFE』みたいなものをつくって、鞄も手に取れて、お茶もできる場所にするといいかもしれないですね。BRIEFINGの店舗はどこもかっこいいし、行くだけでテンションが上がる場所だから」

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ものすごくハードに使っているけど、BRIEFINGの鞄は穴ひとつ空かない。

ものすごくハードに使っているけど、BRIEFINGの鞄は穴ひとつ空かない。

河合「西井さんはいつからBRIEFINGの鞄を愛用するようになったんですか?」

西井「2014年に世界一周の旅から帰ってきてから複数の会社でコンサルティングをするようになったんですけど、いろんな会社を行き来するうちにスーツを着るのをやめたんです。ただ、PCを持ち歩かないといけないからバックパックが必要で。それで池袋にある百貨店で見つけたのがBRIEFINGでした。そのときはブランド名を知らなかったんですけど、見た目がすごくかっこいい。ただ、値段がけっこう高くて(笑)。ちょっと悩んだんですけど、勢いで買って、それから6年間毎日使っています」

河合「ありがとうございます。ちなみにお気に入りポイントは?」

西井「黒と赤のガチャガチャしていない見た目も好きなんですけど、何よりうれしいのはシーンを選ばないこと。アウトドアにもビジネスにも使える。あと、とにかく丈夫。ものすごくハードに使ってるけど、穴ひとつ空いてない。それに使い込むことで味が出てくるじゃないですか。だから、捨てられないですよね。最近は洋服もBRIEFINGのものを着ているんですけど、これもシーンを選ばないので好きです。旅をしていて、アウトドアのブランドの服だとオフィスに行ったときとかに違和感がでるけど、BRIEFINGだとそのまま仕事もできる」

河合「では最後に、BRIEFINGに期待することを教えてください」

西井「できれば、今のクオリティを保ったままでいてほしいです。マスブランドになると鞄の在り方を変えていかないといけないだろうし、価格もリーズナブルにしていく方向に向かうことが多い気がするんですけど、それでもBRIEFINGだからできることを追求してほしい。あと、もう少しファッション関係のアイテムを出してほしいかな。今はゴルフが中心だけど、旅と仕事の中間にあるような服があればぜひ着たいです」

河合「普通のブランドって、このマーケットはいくらぐらいの規模があるからやろうという考え方だと思うんです。でも、BRIEFINGは基本的にWork Hard, Play Harderな人をターゲットにしていて、その人たちのライフスタイルに寄り添い、欲しいものを作っていったらいろんなアイテムができちゃいましたっていう発想なんです。だから、ビジネスとプライベートみたいな感じにカテゴリーで分けない。仕事が終わった後にゴルフに行くかもしれないし、走るかもしれないし、山に登ったりするかもしれない。そういう発想で、ひとつのアイテムで機能性高く使えるアイテムをこれからもつくっていければと考えています。今後、トラベル系のアイテムも充実させていく予定なので、西井さんのような人たちにもっと喜んでいただけるようにしてゆきたいと思います」

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