JOURNAL FILE #11

コンセプトやブランドイメージを表現し、ディスプレイへと昇華する
「VMD(ビジュアル・マーチャンダイザー)」を務める、長崎勇平さん。
その多岐にわたる仕事ぶりから、厚い信頼を集める彼のこだわりについて尋ねた。

JOURNAL FILE #11

PLOFILEYUHEI NAGASAKI

VMD(ビジュアル・マーチャンダイザー)
株式会社SWELL代表

Yuhei Nagasaki

1989年に株式会社ワールドに入社し、開発VMDやアジアVMD開発を担当する。同社退社後の2012年にSWELLを設立し、以後はVMD導入コンサルティングやVMD育成研修、店舗実施などに従事している。

JOURNAL FILE #11

storyYUHEI NAGASAKI

story

半ば強引に誘われてはじめたVMDの仕事を続けて20年。

半ば強引に誘われてはじめたVMDの仕事を続けて20年。

長崎さんがVMDの仕事をはじめたのは、25歳のときのこと。
現在45歳。20年に渡って同じ仕事を続けている。

「会社勤めをしていた当時は営業を担当していたんですけど、ある時期から仕事が嫌になって、辞めようって考えが芽生えはじめたんですね。そんなとき、先輩から『営業のくせにディスプレイが上手だからやってみろよ』と半ば強引なかたちで誘われて。それでVMDの仕事をするようになりました。なんで僕に声をかけたのかを後々聞いてみたら、ワールドでは入社1年目が展示会のディスプレイを手伝う慣習があるんですね。そのときの僕の仕事ぶりを見て、センスがあると感じたらしいんです」

その後の長崎さんは才覚を発揮し、日本国内のみならずアジアエリアのVMD開発を担当するまでに。しかし、順風満帆な日々は長くは続かなかった。

「会社の経営方針の転換にともない日本に帰ってきたら、社内に自分の仕事がないんですよ。それまでは10を超えるブランドを担当していたのに、なんだか後輩の方が忙しくしている。しかも、会社からはマネージャーになることを求められて。とはいえ、ずっとプレイヤーとして活動してきた人間にいきなりそんなことを言っても、すぐに納得できることでもない。なんだか自分の居場所がなくなったように感じましたね」

そうした折に、再び転機が訪れる。

「自分をVMDの道に引っ張ってくれた先輩が早期退職をして、フリーランスのVMDとして活躍していたんですけど、体調を崩されたことがあって。そのときお見舞いに行ったら、店舗のVMDを任せられる若い人間がいないので、仕事を手伝ってくれないかと誘われたんです。少し心が揺れたんですけど、2週間後に仕事でサンフランシスコに出張する予定があって……。すごく楽しみにしていたので、そのときは断りました。でも、後日になって上司から、別の人に出張を任せてほしいと言われたんです。今までそんなことなかったから、それはもう神様が“会社をやめろ”と言っている気がして。それで退職することにしました。なんか偉い人からめちゃくちゃ引き止められたんですけど、自分の意志は固まっていたので揺らぐこともなかったです。36歳のときのことでした」

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気になった店では必ず買い物をして、常に自分の感覚を研ぎ澄ましている。

気になった店では必ず買い物をして、常に自分の感覚を研ぎ澄ましている。

長崎さんが独立して約10年。守り続けているルールなどはあるのだろうか。

「VMDであるからには、売上に貢献することを忘れてはいけません。それをしないでただディスプレイだけをする人は、僕から言わせてみたらデコレーターにしか過ぎない。限られた予算の中で、クライアントのためにどれだけ力になれるのか。それを常に考えています」

また、対話を重ねることも意識しているという。

「例えば、クライアントから内装を赤にしてほしいと頼まれたとします。でも、赤は流行らないので、僕としては青にしたい。そうやって意見が割れた場合には、相手の要望を鵜呑みにするのでも、自分の要望を押し通すのでもなく、お互いに歩み寄れる方向を模索するようにしています。その方が良い仕事になることが多いので」

では、インスピレーションはどうやって培っているのだろうか。

「自分自身が消費者としての目線を持ち続けることですね。僕は、どういう心の変化が購買に繋がるのかを体験したいので、気になるお店に行ったら絶対に買い物をして帰るようにしています。そうすると、こういうディスプレイはテンションが上がるなとか、こういう商品はもう少し違った空間で提供した方がいいんじゃないかって、インスピレーションが湧いてくるんです」

長崎さんがこうした購買体験を大切にするのは、会社員時代の教訓があるからだという。

「僕の上司が『金曜日に会社にいる奴はダメだ』と言って、みんなを会社から出すんです。その代わり、翌週の月曜日にランダムで当てられて、どのお店に行って、どんなことを感じたのかを発表しなきゃいけなくて。そのときのことがあるから、今でも体験を大切にしているんでしょうね」

THE GREAT BURGER

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僕らの世代は、MADE IN USAに弱い。

そんな長崎さんがもの選びの際に拘っているのが機能美だ。

「僕は、デザインの一つひとつに機能が備わっているものが好きなんです。MA-1の腕にポケットが付いているのも、スピードマスターが手巻きなのも、無意味なようで実はきちんとした理由があるわけじゃないですか。そういうものに対して、すごく興味を刺激されるんです」

では、長崎さんの目にBRIEFINGの鞄はどのように映っているのだろうか。

「堅牢なのが良いですよね。いくらデザインが優れていても、ちょっとしたことでファスナーが飛んだり、ほつれたりしてしまうようなものは絶対にイヤ。しかも、僕はいくつも鞄を使い分けるタイプじゃないので、長く使えるのは本当にうれしい。あと、色も逃げていないですよね。黒のボディに赤のラインが入っているだけのツートンが潔いというか。男らしさを感じます」

また、「MADE IN USA」という言葉の響きにも魅力を感じるという。

「“MADE IN USA”に弱いんです、僕らの世代は特に(笑)。アメリカンカジュアルが人気だった時代に青春を過ごしていたので、アメリカへの憧れは半端ないですよ。おそらく、今生きている人たちのなかで、アメカジにいちばんお金をかけた世代だと思います」

最後に、今後の展望について尋ねてみると次のような回答があった。

「僕をVMDに誘ってくれた先輩から教えてもらった唯一のアドバイスが、『仕事は断るな』なんです。その教えを僕はずっと守っていたから、化粧品とか下着とかホテルのロビーとか、とにかくいろんなことを経験できました。そのおかげで今の自分があるので、これからもさまざまな業種のVMDに携わりたいですね」

CARPE DIEM

WEB:https://www.carpediem-aoyama.com/
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